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春がいっぱい

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2022.01.24

01 タイル

haco

街の中に潜むキュートなモチーフや建物、風景をお菓子で表現するスイーツ作家hacoさん。今回から街の気になった一部分を切り取って、アイシングクッキーで描く連載「Eatable City」がスタートします。hacoさんのフィルターを通して見ると、街の中にはお菓子みたいなモチーフがたくさん。お菓子目線で街を歩けば、いつもの景色がかわいらしく思えてくるかもしれません。


 

父の実家の隣がタイル工場で、小さい頃はよく工場の周りに落ちているB級品のタイルを拾って集めていた。
その影響で、街にあるいろいろな大きさや質感のタイルを観察するのが好きになった。見るだけでなく、触って素焼きタイルのザラザラや、釉薬が塗られたタイルの滑らかさを感じるのも楽しい。
今回は東京のいろいろな街の気になるタイルを、いくつかつくってみた。

荻窪のマンションのタイル

環八沿いに建ち中央線からも見える、青い塔屋が目じるしのマンションの壁タイル。平行に貼られているのに斜めに見えるタイルがおもしろくて、クッキーにしてもそれが再現できるか気になっていたのだけれど、できあがったクッキーも、やっぱり横の線が斜めに見える。

釉薬の量で変わる青いタイルの微妙な色みは、いろいろな濃さの青いアイシングを混ぜて表現した。はじめに灰色のアイシングで線を描いて、タイルの青いアイシングを塗ったあと、全てが乾くまで待ち、最後に灰色のアイシングの線を削り溝をつくって、目地の部分のザラッとした質感を出している。

ニュー新橋ビルのタイル

新橋駅の西口にある、ニュー新橋ビルの外観や、いろいろな場所の壁に使われている、個性的なタイルが好き。特に好きなのは、エスカレーター脇の三角と菱形を組み合わせたタイルの壁。ブルーグリーンに見えるけれど、近づくと釉薬の具合で青が濃く出ているものや灰色っぽくなっているもの、いろいろな緑色がある。

タイル部分のアイシングクリームは様々な濃さの緑、青を用意して、一枚ずつ量を調整し、クッキーの上で混ぜなから、微妙な色ムラが出るようにした。

新宿駅西口のタイル

建築家坂倉準三設計の新宿駅西口ロータリーは、曲線を描くスロープ、突き出た換気塔など、どこを見ても素敵で、行くたびに何枚も写真を撮る。バスターミナルへの階段や換気塔の壁に使われているタイルは、様々な色が絶妙に組み合わさっていて、同じ色のタイルも釉薬の具合で一枚一枚が違った表情を見せている。このタイルをじっくり観察するのにおすすめな場所は、南北連絡通路。日が当たらない場所にあるため褪色せず、タイルが綺麗な色のまま残っているから。

いつも焼きムラで釉薬がピンク色に濃く出ているタイルを探してしまう。タイルのザラザラな感じは、アイシングの表面が乾いたあと、針で細かい穴を開けて表現した。

秀和レジデンスのタイル

60年代から80年代にかけて数多く建てられたマンションシリーズ、秀和レジデンスが好きで、よく見に行く(現在書籍制作中!)。50年近く前から建っているものがほとんどで、エントランス周りは改修されているところも多いけれど、竣工時のままのタイルがアプローチに残されているのを見つけると、とても嬉しい。

写真は1972年に建てられた秀和レジデンスのアプローチにある、ビビットな色のタイル。はじめにクリアファイルをタイルの形に切り抜いてクッキーの上に置き、硬めのアイシングクリームを塗り伸ばして、ステンシル方式で作った。タイルの表面の質感がうまく出せたと思う。

haco

アイシングクッキーやバターケーキなどで、街にあるモチーフを表現するお菓子作家として活動中。東京ビルさんぽメンバーとして「いいビルの世界 東京ハンサムイースト」(大福書林刊)に携わる。2022年にはトゥーヴァージンズから『秀和レジデンス図鑑』を刊行予定。1960〜70年代に建てられた、とくにデコボコ、ギザギザしたヴィンテージマンションや駅の床にある矢印を撮り集めている。