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春がいっぱい

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2022.04.26

04 百貨店の外壁

haco
街の中に潜むキュートなモチーフや建物、風景をお菓子で表現するスイーツ作家hacoさん。今回から街の気になった一部分を切り取って、アイシングクッキーで描く連載「Eatable City」。hacoさんのフィルターを通して見ると、街の中にはお菓子みたいなモチーフがたくさん。お菓子目線で街を歩けば、いつもの景色がかわいらしく思えてくるかもしれません。

 

百貨店が好きだ。
名古屋に住んでいた幼少の頃、特別な日には栄にある松坂屋へ行けるのが楽しみだった。
おもちゃを買ってもらい、そのあと屋上にある小さな遊園地で遊ぶのがお決まりのコース。
家の近くのバス停から栄行きのバスに乗るときのわくわくする気持ちを、今でも思い出せる。
大人になった今はもうおもちゃ売り場へは行かないけれど、大切な人への贈り物は百貨店で買って素敵な包装紙をかけてもらいたいし、何かを頑張ったあとにはデパ地下に美味しいものを買いに行きたい。
昔も今も、特別な存在。
今回は、外観が特に好きな百貨店のクッキーをつくってみた。

京王百貨店新宿店のクッキー

新宿駅西口の南側、金属製のカーテンウォールで覆われた、京王百貨店新宿店。圓堂政嘉が設計し、竣工は1964年。建った頃はまだ西口広場はできていなかった。

西側の手裏剣みたいな模様のカーテンウォールの平らな板の感じとXの部分の凹凸をしっかり出したくて、あらかじめ透明のフィルムにカーテンウォール型のパーツをアイシングでつくり、それを一枚ずつクッキーに貼り付けた。

土台はコンクリートでできているように見せたかったので、クッキー生地を灰色に着色した。(少し焼き色がついてしまい、緑色になってしまったけど)

緑が生い茂る新宿駅西口の換気塔と京王百貨店新宿店。

参考 https://ameblo.jp/mickat/entry-10884863765.htmlhttps://ameblo.jp/mickat/entry-10884863765.html

小田急百貨店新宿店のクッキー

新宿駅西口の真上と右手側に建つ小田急百貨店新宿店。

建物の歴史が気になったので、広報の方に問い合わせたところ、その成り立ちは少し複雑で、最初に建てられたのが現在別館になっているハルクで1962年。
その4年後の1966年、駅の真上に完成した北側の新宿地下鉄ビルディング(設計者不明)と、さらに1年後、南側に完成した新宿西口ビル(設計は新宿駅西口広場と同じ、坂倉準三)とが合わさり、現在の小田急百貨店となった。正面から見ると、北側が少し斜めに曲がっているのがわかる。その部分がビルとビルの継ぎ目らしい。

ふたつのビルは同じ形のカーテンウォールを採用し、統一感を出したようだ。
横に長い一つのビルだと思っていたので驚いた。

以前写真を撮ったときに、銀色の金属のカーテンウォールの下側、アールの凹んでいる部分が光の加減で青く見えたので、その通りにつくってみた。

窓ガラスに映る対面の松岡セントラルビルディングとモード学園のビルが印象的で、クッキーの窓もガラスっぽく見せたくて艶を出した。

写真を撮ったあと12階の展望スペースへ行き、新宿駅西口を見下ろしてみた。
明治安田生命新宿ビルとスバルビルがない風景に、まだ慣れない。

下の写真は2017年に撮ったもの。

新宿駅西口は、これから大規模な再開発が始まる。
小田急百貨店新宿店本館は今年の9月に営業終了し、建て替えられる。
京王百貨店新宿店もまだ時期は発表されていないけれど、同じく建て替え予定のよう。
この景色が見られるのもあと少し。

小田急百貨店を地下から見上げるのが好き。

小田急と京王の間にかかる避難橋。通ってみたい。

西武池袋本店のクッキー

中央線沿いの東京の西の方に住んでいて、都会に用事があるときはついつい新宿で電車を降りてしまうので、池袋へ行く機会がなかなかない。
駅に降り立つと必ず「東が西武で西東武」と、ビックカメラのCMソングが脳内に流れる。
東武百貨店の外観も大好きなのだけど、今回は東口にある、白い大きなパネルが特徴的な西武池袋本店のクッキーをつくった。

広報担当の方によると、建物は1956年に建てられたものを改装、増築しながら大切に使われているそうだ。
1990年の改装時に取り付けられた下部がアーチ状になっている大きなパネルは、船に見立てた店舗に寄せる波を表現していると教えてもらった。

窓から少し浮いているように見える感じを出すため、アイシングでパネルのパーツを6枚つくり、2枚ずつ重ねて貼り付けた。

旧そごう柏店

JR常磐線と東武野田線が乗り入れている柏駅、東口の目の前に建つ旧そごう柏店の竣工は1973年。
別館(スカイプラザ)は今も営業しているけれど、本館は2016年に閉店し、今は建物だけが残っている。

薄い水色の三角の窓が並ぶ外観は、他では見たことがなく、とてもかわいい。まだ営業している頃、誰かのInstagramを見て知り、すぐに見に行った。
以前Twitterで、建設途中の写真を見かけた。

三角の窓の枠はプレキャストコンクリート製(工場など、別の場所であらかじめつくったコンクリートの部材)で、それを現地でパズルのように組み立てたみたい。

アイシングを絞ると表面張力で盛り上がってしまうため、三角にくりぬいたクリアファイルを使いステンシルをして平らな窓をつくった。
窓の枠の立体感をしっかりと出すため硬めのアイシングの線を二段に絞り、その中にゆる目のアイシングを流した。

2015年、まだ営業していた頃のそごう柏店。

折り重なる赤い階段。

店内に飾ってあった、竣工時のイラスト。

haco

アイシングクッキーやバターケーキなどで、街にあるモチーフを表現するお菓子作家として活動中。東京ビルさんぽメンバーとして「いいビルの世界 東京ハンサムイースト」(大福書林刊)に携わる。2022年にはトゥーヴァージンズから『秀和レジデンス図鑑』を刊行予定。1960〜70年代に建てられた、とくにデコボコ、ギザギザしたヴィンテージマンションや駅の床にある矢印を撮り集めている。