newworld

newworld

春がいっぱい

h
2022.02.15

06 私を極楽スキー天国に連れてって

山下メロ

絶滅危惧種である「ファンシー絵みやげ」の保護活動を日本全国で行い、これまで調査した土産店は約5000店、保護した個体は21000種におよぶ、ファンシー絵みやげ研究家の山下メロによる、解説連載。全国行脚、個体比較、分析推察をもって、ヘンテコかわいいファンシー絵みやげカルチャーを真剣にツッコミ! 懐かしいけど斬新、ゆるいけど辛辣、そんな愉快なファンシー絵みやげの世界に誘います。

はじめに

この連載では1980年代から1990年代にかけて日本中の観光地で売られていた子ども向け雑貨みやげ「ファンシー絵みやげ」(ファみやげ)の魅力を紹介しています。

ファみやげの定義を簡単に説明すると、3つの特徴があります。

1. 実用的なものにイラストがプリントされている
2. そのイラストはデフォルメされた偉人や擬人化した動物である
3. そしてローマ字や手書き文字で地名が書かれたり、言葉が添えられたりしている

今回のテーマは、冬季五輪にちなんでスキー』です。

スキーとお土産

今まさに、冬季オリンピックが開催中。さまざまなウィンタースポーツの話題がテレビなど各メディアを賑わせています。ファンシー絵みやげが売られていた1980年代~90年代の初頭は、まだスノーボードが本格的に流行する前でウィンタースポーツといえばスキーが主流でした。しかもスキーには泊りがけで行くことがほとんどで、お土産を買って帰るため、ファンシーなお土産品が重要です。

ゲレンデ近くに宿泊用のペンションやホテルが並んでいる中に、土産専門店があったりします。スキーの道具類はアルファベットのブランドロゴがあしらわれた洗練されたデザイン。そのためお土産にもまた洋風のデザインが求められるわけです。


長野県は白馬エリアの八方尾根も「HAPPOONE」とアルファベット表記に。最初「ONE」が英語の「ワン」だと思ってました。珍しい雪合戦がモチーフのイラスト。平成時代の1998年に日本で行われた冬季オリンピックの開催地が長野県でした。

ゲレンデは高原にあり、近くには古くからの温泉地があって、そこに泊まったりします。その温泉街にある土産店では、温泉名だけでなくゲレンデ名が書かれたファンシー絵みやげが売られていることも。


新潟県のゲレンデ・上越国際スキー場のファンシー絵みやげ。上越・中越・下越という新潟県の地域分類では中越にあるのですが、これは上毛と越後を繋ぐ上越線沿いにあるからこの名前なのです。「すきぃ(ハート)ぼぉぃず」で「好き」と「スキー」をかけている。最初いきなり「ORETCHI」と「A」が欠落してしまっていますが、こういった例はよくあります。


こちらは長野オリンピックより前、札幌オリンピックで使われた大倉山のファンシー絵みやげ。

スキーブーム到来

ホイチョイプロダクションがスキーを題材にした映画『私をスキーに連れてって』と、スキーに関する書籍『極楽スキー』を発表した1987年あたりから、大学生など若者を中心にレジャーとしてのスキーブームが訪れました。

そしてゲレンデの近くにも土産店が建ち並ぶようになり、売られるファンシー絵みやげにも変化が。もともとターゲットだった子ども向けから、少しお兄さんお姉さんの香りが漂うようになってきました。


シャトー塩沢のファンシー絵みやげ「GONちゃんFREE STYLE」。「すきー場にいくと えっち ができるってホントかな?」というセリフ、まさにゲレンデがナンパスポットになった時代で、お土産の内容をみてもターゲットが子ども向けから大学生向けへにわかに変化していることが分かります。

スキー場ファンシー絵みやげの特徴

スキー場の商品でモチーフとなるキャラクターは、まずスキーをする人。スキーヤーです。そして、やはり山なのでキツネやクマなどの動物。高原には牧場があるのでホルスタイン種のウシも使われます。単純にそのキャラクターのイラストというパターンもあれば、ちゃんとスキー板を履いているものもあります。


温泉街とゲレンデがすぐ近い長野県・野沢温泉スキー場のファンシー絵みやげ「HAKUGIN GRAFFITI」。スキーヤーをキャラクターにしたものです。形と背景が初心者マーク(若葉マーク)なのは、まだスキーの初心者であるということを意味します。


こちらも初心者マーク。山にいる野生動物でよくモチーフとなるクマにスキーさせている例です。やはり初心者なのでオドオドしてます。


こちらは高原にある牧場の定番キャラである牛さん。ちゃんとした綴りの英単語混じりのローマ字で文章が書かれています。そしてスキー板には人気ブランド「ロシニョール」をおそらく無許可で記入……。

それからスキー場では、人間でも動物でもないキャラクターが多く見受けられます。まず代表格が雪だるま。マフラーを巻いていたりスキーをしていたりと擬人化されています。他には、UMAのイエティに妖怪の雪男。そして雪崩のようなものに顔が書いてあったり、雪の何か……としか言いようがない、謎の生命体など様々です。


ソリ遊びをする雪だるまキャラクター。こちらは栂池スキー場のファンシー絵みやげ「WHITE BALOON」。「雪の妖精が舞い降りる」と書かれていますが、雪だるまのことなのでしょうか。雪だるまは人物でも動物でもないキャラクターの定番。


新潟県妙高高原スキー場のファンシー絵みやげ「ROMANTIC RIFT」。スキーを滑ってる絵が多い中、こちらはリフトを使っているシーンを大胆に切り取った意欲作。クマにも雪だるまにも雪男にも見えるので、何のキャラクターかはよく分かりません。


長野県・志賀高原のファンシー絵みやげ「WHITE MONSTER」。雪男っぽいキャラクターです。親子というのがかわいい。子どもは帽子かぶってます。


志賀高原の「Clap in White」。木の精のように見えますが、何なのかは、いまだもって不明。

スキー場らしい商品たち

スキーが人気になるにつれ、ゲレンデ名に横文字をつけてブランド化する例があり、それもまたお土産品の価値を高めました。有名なところでは、東京オリンピックのポスターや企業ロゴなどで有名な亀倉雄策さんが手がけられた岩手県の安比高原「APPI」などは、当時ステッカーを車に貼るのが流行りました。ステッカー以外にもそのゲレンデ名のロゴをあしらった商品が各種売られていたのです。


APPIやKIRORO、SIZCAにTOMAMUなど東北や北海道のゲレンデたち。このようにオシャレなアルファベットのロゴを作ってグッズ展開もしていました。TOMAMUの例ではファンシー絵みやげのキタキツネが描かれています。

ファンシー絵みやげにロゴだけが使われた例もあります。新潟県の苗場スキー場「Naeba」や群馬県の万座スキー場「Manza」、北海道の富良野スキー場「Furano」などプリンスホテル系のロゴは、許可を得ているのかどうなのか、そのまま書いてあるものが多く存在しました。


Manza、Naeba、Furano とプリンスホテル系の「あのロゴ」がそのまま使われているパターン。

また、他にもスキー用のポンチョや、スキー用のヘッドバンド、リフト券のケースなど、実用的なスキーグッズにファンシー絵みやげのイラストがプリントされた例がいくつもあります。さらにスキー場には車で訪れることが多いため、カー用品のファンシー絵みやげも。


キタキツネのぬいぐるみリフト券ケース。腕のところにバンドで固定して、リフトに乗る時に1日券などを係員に見せる。


こちらは図形と動物を組み合わせた感じのオシャレなファンシー絵みやげシリーズ「Gritty Pard」の手袋。


雪だるま「MELODY SNOW」のキーケース。一応こちらはカーグッズに分類されます。

なぜか全裸で……

謎が多いのですが、こういった冗談っぽさが当時の時代の空気感でした。今後、さらに時代の空気を感じられるファンシー絵みやげを紹介していきたいと思います。


「SKI」のスペルを「SKY」にしてしまった例、2種。この間違いは起こりやすいですね。ちなみに「SHIGA」は滋賀県ではなく志賀高原。こちらは誤解を生まないように「SHIGAKOGEN」とフルで書かれることが多い。


スキーヤーのキーホルダー。かなり細かく文字情報が入っている。3人の出身地と書かれているのは、その横に地名を入れるため。しかしこれは地名が印刷されていない。


「今年こそリフトに乗るぞ!」という決意を表明する、初心者感を面白がるタイプのキーホルダー。しかし、おそらくもともと海水浴場などで売るためにサーフボードとして作った形だと思われます


中里スキー場。「すべれないの…」。それは分かったから、服を着た方がいい。雪も降ってるし。


中里スキー場。「だれかおしえて…」確かに初心者なら教えてもらうのが一番。だけど、それより早く服を着た方がいい


「大きくなあれ」……そう願う気持ちは理解できます。スノーゴーグルに襟巻だけしてるけど、服を着た方がいい


「はだかだけどさむくないぞー がんばるぞー」。スキーブーツにスキー板、ストックまで持ってなぜ服を着ないのか……。そもそも寒くないからといって、なぜ裸なのか……。


スキーが好きなのはよく分かりましたが、服を着ませんか…??


……逆に動物は服を着ている!!

なぜ、ゲレンデで全裸になりがちなのか!? 

その謎はいまだもって分かっていません。研究を続けることとします。

何か情報をお持ちの方がいらっしゃいましたら、是非お寄せください。今後もまた新たな謎を紹介してまいります。

山下メロ

Mero YAMASHITA
庶民風俗の研究家。バブル時代の観光地みやげ「ファンシー絵みやげ」と平成初期の文化「平成レトロ」を主に研究。著書に『ファンシー絵みやげ大百科 失われたバブル時代の観光地みやげ』(イースト・プレス刊)がある。

YouTubeチャンネル