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じゃっ夏なんで

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2022.07.26

10 ツッパリ・ヤンキー文化と修学旅行

山下メロ

絶滅危惧種である「ファンシー絵みやげ」の保護活動を日本全国で行い、これまで調査した土産店は約5000店、保護した個体は21000種におよぶ、ファンシー絵みやげ研究家の山下メロによる、解説連載。全国行脚、個体比較、分析推察をもって、ヘンテコかわいいファンシー絵みやげカルチャーを真剣にツッコミ! 懐かしいけど斬新、ゆるいけど辛辣、そんな愉快なファンシー絵みやげの世界に誘います。

はじめに

この連載では1980年代から1990年代にかけて日本中の観光地で売られていた子ども向け雑貨みやげ「ファンシー絵みやげ」(ファみやげ)の魅力を紹介しています。

ファみやげの定義を簡単に説明すると、3つの特徴があります。

1. 実用的なものにイラストがプリントされている
2. そのイラストはデフォルメされた偉人や擬人化した動物である
3. そしてローマ字や手書き文字で地名が書かれたり、言葉が添えられたりしている

今回のテーマは、ツッパリ・ヤンキーとファンシー絵みやげです。

修学旅行とヤンキー

ファンシー絵みやげのターゲット層は1980年代~1990年代の子どもたち。中でも重要なのが修学旅行であることは何度も伝えてきました。当時中学生ともなればツッパリ、ヤンキーなど不良学生になったクラスメイトもいて、一緒に修学旅行に行くこともあるでしょう。

彼らは体育祭や学園祭などの学校行事をエスケープしそうなものですが、正義感が強く、情に厚いので、クラス対抗などで仲間のために力を発揮したりします。中でも修学旅行は他校の生徒や現地の学生とのトラブルが発生することもあり、同じ学校の仲間を守る意味でも参加するケースが多かったと感じています(※ 個人の感想です)。

筆者は埼玉県加須市という、町を歩けば「加須連合参上!」と暴走族のチーム名がスプレーで描かれている不良の多いエリアで中高生時代を過ごしたこともあり、経験から普段学校に来ないヤンキーも修学旅行には参加するというのを肌で感じていました(※ チーマー世代ですが、埼玉県でも東京から遠く離れているのでヤンキー文化が根強かったのです)。

しかし、ヤンキーが修学旅行に来るというイメージは他にもあります。それは、土産店にヤンキー向け商品が多いこと。特に修学旅行の目的地になりやすい観光地ほどヤンキー向け商品が多いのです。

もちろんヤンキー向けの商品を買うのは、本物のヤンキーだけでなく、ヤンキーに憧れる学生も含まれますけども……。とにかく、数が多く存在する観光地のヤンキー向け商品。こちらを今回は紹介していきたいと思います。

土産店に売られるヤンキーアイテム

土産店で売られるヤンキー的なアイテムといえば、まず木刀が定番でしょう。ヤンキーを題材とした漫画やドラマ、映画などでもケンカの武器として登場します。

特にその地域の木を使っているという訳でもなく、その観光地と何のゆかりもない商品です。京都など歴史に関係する観光地であれば、いくらか関係がありそうな感じがしますが、日本全国広範囲で売られています。1500円ほどしますので安い商品ではありませんが、多めにお小遣いを持っていける修学旅行なら、余裕で買えてしまいます。「せっかくだから地域限定の商品を買おう」といったマインドは持ち合わせていません


かつて東京タワーにあった土産店・東京堂の店頭で売られていた木刀(画面中央)

現在では問題視されているためか、教師の許可を得ないと買えない商品になっているようで、買おうとする生徒がいると「先生の許可もらってますか?」と店員さんが確認するようになってきています。

観光地にあるヤンキーアイテムは、その土地にゆかりのない木刀だけではありません。地元のショップで買えそうなものまで売られています

かつては地域に1店舗は存在した、改造学生服を扱うお店。いわゆる普通の学生服(標準学生服)を、上着の丈を長くした長ランや丈を短くした短ラン、さまざまなシルエットのスラックスなど、既製品からオーダーメイドまで扱うお店です。


見たことのない人のための参考資料として、改造学生服(短ラン)はこんな感じのものです

そこで売られているヤンキーブランドのコームやエチケットブラシなどが土産店で売られてる例があります。地元のショップでも買えるのですが、お小遣いによって懐に余裕のある修学旅行の旅先で、つい買ってしまうのです。


有名ブランドであるベンクーガーのコーム

木刀と同様に「せっかくだから地域限定の商品を買おう」といったマインドは持ち合わせていません。その中でも特徴的なのが改造裏ボタンです。


右上が標準の裏ボタン、制服の金ボタンの裏側に付けるストッパーみたいなものです。
右上以外が改造裏ボタンで、制服の内側で、こっそり華美なものやメッセージのあるものを装備できてしまうのです。服装検査でバレる可能性こそあれ、分かりやすい改造学生服だと攻撃対象になってしまうこともあるため、ヤンキーに憧れる程度の学生にとって改造裏ボタンは丁度いいアイテムでした。

ショップで売られている改造裏ボタンには、当たり前ですが使い方の説明などはありません。「そういうお店」に来ている時点で、それが制服を改造するものであることは承知しているわけですし、必要ならばお店の方が説明してくれます。

それに対して土産店では、急に改造裏ボタンだけが置いてあっても、それが何であるのかが伝わりにくく、また使用方法も分かりません。と、いうわけで丁寧な説明つきで売られています。これは観光地で売られる改造裏ボタンの特徴です。


観光地の土産店で売られていた裏ボタン、表面に大きなドラゴンのイラスト

観光地の土産店で売られていた裏ボタン、裏面には丁寧に説明が書かれている

これを買うのはヤンキーというよりも、修学旅行で気が大きくなったヤンキー未満の生徒が、ちょっと背伸びする意味で改造裏ボタンに手を染めてしまう……というものでしょう。なにせ、地元のショップにはヤンキーが出入りするわけで、シャバ僧では店に近づくことすら困難といったケースも聞いたことがあります。

※シャバ憎とはヤンキー用語で「シャバい小僧」の略。俗っぽい、不良でない一般人のこと。

ヤンキー絵みやげ

さて、ヤンキーといえばミキハウスのトレーナーやミニーちゃんのTシャツなど、ファンシーでカワイイものを身に着けます。そのため、普通のファンシー絵みやげももちろん購入するわけですが、その中でも特にヤンキーを意識したアイテムが多数見つかります。
ここからは、そんなファンシー絵みやげを紹介したいと思います。


ファンシー絵みやげの定番である北海道のキタキツネも三角形のサングラスに神風のハチマキ、学生服を喜たヤンキー仕様のものが存在します。


「なめんなよ」で80年代に流行した、ツッパリ猫のキャラクター「なめ猫」のドアプレート。部屋のドアに付けて、今どういう状態かを示すものです。恐らく正規品ではありません。


東京都・原宿。ヤンキー漫画『ビーバップハイスクール』風のカギ型キーホルダー。ヤンキー漫画を意識した商品は非常に多かったです。


ヤンキー漫画『湘南爆走族』を意識していると思われる「北海道爆走族」キーホルダー。


こちらは『湘南爆走族』ならぬ「原宿爆走族」


和歌山県・南紀州。何かを思わせる「WARU爆」キーホルダー。


暴走族のフラッグなどで多用される旭日旗柄のキーホルダー。同じく定番の「神風」の文字とヤンキー3人が描かれています。あとからプリントされている地名「NARA」も修学旅行の定番の目的地。


こちらは福島県・会津若松の白虎隊ミラー。こちらはヤンキーのイラストではないものの、旭日旗の模様が背景に描かれています。


こちらは「のれん」。「神風」の文字と共に「奈良」もしっかり筆文字でデザインされています。2人の学ランを着た不良とともに「ハンパな奴らはお呼びじゃない。俺たちのハートはギンギンに燃えてるぜ!そこんとこ夜露紫紅(ヨロシク)。」とローマ字で書かれています。


福岡県・博多。「爆走貴族 魔暴露死!!(まぼろし?)」のフラッグ。黒地の旭日旗模様。「オレ!!オレのタコヤキ!…」「ねぼけてんじゃアねェ~よ!」というやりとりがなされています。タコヤキは、ダンプ松本さんがCMに出ていたタコヤキラーメン的なイメージでしょうか……。


特攻レディスのれん。「爆音と共にやってくる土曜の夜の天使たち」「硬派!女 一世一代 咲かせて見せます恋の花!!」など、特攻服に刺繍されがちなヤンキーポエムがローマ字で書かれています。


少年ジャンプの漫画『ろくでなしBLUES』感の強い「OUT-SIDER」のれん。「Black Board Jungle」は映画『暴力教室』(1955年、アメリカ)の原題。


旭日旗を反転させたデザインのフラッグ。ヤンキー向け商品については暴走族的なフラッグが多い。「半端な奴は消え失せな!!ワシはバリバリ特攻だ 今日もパワー全開 仏恥義理(ブッチギリ)」とローマ字で描かれています。しかし真ん中のイラスト、どんなファッションなのかイマイチ判然としません……。


こちらも同じく旭日旗の反転で、神風の文字。そしてイラストはファンシー絵みやげらしい仕上がりになっています。暴走命のハチマキ、背中に神風の特攻服。そして「すっとぼけたツラしてこの辺りうろつくんじゃねーよ。ションベンちびらんうちに失せろこのタコ」とローマ字で書かれています。


こちらは新潟県佐渡島のOKESA CLUBのれん。鬼太鼓、おけさ、たらい船と佐渡の郷土芸能がすべて描かれています。そして背景には旭日旗、さらに……英字新聞!?
日本の郷土芸能にそぐわない感じもしますが、……この英字新聞もまたヤンキーアイテムのデザインに非常に多かったものです。


もはやアメリカ合衆国の国旗というパターンのお土産もあります。
「神風」や「特攻」と言いつつも、さきほどの英字新聞と同じようにアメリカンな要素も多く、星条旗を部屋に飾ってたりしました。こちらも観光地の土産店で売られています。


「AMERICAN HERO」の「のれん」。ヤンキーの憧れであるジェームズ・ディーンです。ここまでアメリカンなモチーフも、非常に日本的な「のれん」というフォーマットに落とし込んでしまうのが当時のお土産なのです。こちらも観光地の土産店で売られていました。


なんと、憧れの輸入ビール、バドワイザーさえも和風な「のれん」にされてしまっています。ヤンキーが部屋で使うのに、やはり「のれん」がちょうど良いのでしょう。こちらもまた、観光地の土産店で売られていました。

これだけヤンキーを意識したアイテムがあったということは、時代性だけの問題ではなく、やはり修学旅行とヤンキーは密接な関係にあったと考えられます。
歴史的な偉人と同じようにキャラクターイラストになったということは、ある意味ヤンキーは当時の象徴的な存在だったと言えるでしょう。

修学旅行の目的地として定番の観光地では、今でもこういった商品に出会える可能性が残されています。是非行ってみましょう。

山下メロ

Mero YAMASHITA
庶民風俗の研究家。バブル時代の観光地みやげ「ファンシー絵みやげ」と平成初期の文化「平成レトロ」を主に研究。著書に『ファンシー絵みやげ大百科 失われたバブル時代の観光地みやげ』(イースト・プレス刊)がある。

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